「Thinking Better」「ショウコの微笑」を読んで+チェ・ウニョン作家のインタビュー
これまでの自分の生き方を振り返る日々が続いている。
そんな中でも、今思い浮かぶ一番大きな気付きは、相手が、あるいは状況が、自分の思い通りに行かないときに「怒り」を感じることの的外れさ、と言えるかもしれない。
一緒に住んでいる人に対してもそうだし、もっと遠い人間関係についても。あるいは、行きたいと思っていた店が閉まっていたりするときについても。
一言で、対象に「期待」をしている、ということ。自分の思うように行動したり、自分が望む状況であるということを。
物事は自分の思う通りである「べき」だ、という思い込み、一種の強迫的な観念から自分を解き放つことは、自分にとっても「よい」ことであるほかない、ということに気づく。
そして、こういうことも含め、誰でも失敗するということ。そして、失敗しても、それは「行動」の失敗であって、私という人格のそれではない、ということ。
誰しも失敗はする。それは私もそうで、相手もそう。そんなふうに思うと、自分を許すように、相手も許すという気持ちが自然に芽生えるようでもある。
誰も、初めての経験の中で、「ああ」行動し、判断するほかなかった、ということ。
その過程で、私も過ちを犯してきたかもしれないし、相手も同様だろう、ということ。そこには、必然的に私とは違う相手の経験や考え方があったということ。
でも、過ちから私は学ぶことができるし、これから、もう少し別様に行動できるかもしれない。学ぶために、私のこれまでの全ての経験があったのだと思えたら、私のこれまでの数年間に対するなんともいえない気持ちも——それをなんと表現すればいいのだろう?やるせない?残念な?안타까운?——少し解け始めるようにも、感じる。
こういうことを、ジェリー・ミンチントンの『Thinking Better』という本を通して感じるようになった。邦題は『うまくいっている人の考え方』で、昔だったら絶対手を伸ばさなかったタイプの本(笑)でも、藁にもすがる思い、にも少し近い形でKindle unlimitedを通して読むと、なるほど納得する部分が多かったのだった。
ちなみに、タイトルがアレ過ぎて英語で表記することに。『良い方に考える』という意味なのに、なぜこう邦題をつけるかというところに、根深いものを感じる。友人にこの話をしたとき彼女が言っていたけど、なぜこう成功/失敗を決めがるのか、という。そんなものない、考える必要がない、という本なのに!
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こうやって反省的な気分のときに、ショウコの微笑を読んだからか、またこれも染みた。
ショウコの微笑 |
小説を読んで涙が流れたのなんていつぶりだろう?でも、そういう人も多い小説。
そして、読むと心が静まる。重くなる——否定的な意味ではなく、自分の生について振り返らざるを得ない気分にさせられる。こういうのも私にとっては多くない、いやめったにない経験だった。
そして、チェ・ウニョン作家がインタビューで言っていたことだけど、もう少し隣にいる人、近しい人を、大切にしたくなる。韓国語から直訳すると、愛したくなる。
これもまた、ちょっと恥ずかしくも、作家の意図通りに感じるところが多かったのだった。
このインタビューは半ばあたりからとても良いことを言っていて、心に響く部分が多かった。
その中には、さっき書いたすべては経験のためだった、ということともリンクすることもあって。
それは、小説を書く過程で自分に変化はあったかとの問いに、作家はなんで生まれてきたんだろう、と苦しく思うことが多かったけれど、小説を書き終わるに至って、あぁ、自分は全てのことを経験するために生まれてきたんだ、ということを頭ではなく、感じたのだ、という話。
自分の人生に無駄なんてものはなく、全てを経験し、学ぶために、これまで生きてきたし、またこれまでも生きていくだろう、ということ——ふとネガティブな思考に囚われるとなんで生きているんだろうという思いが、そんなこと考えても仕方ないと思いつつも過ぎってしまう私にとっても、これはとても胸に響く話だった。
そして、競争し、価値判断し、レベル分けし、相手だけでなく自分も対象化して生きるこの「人間性が不足した」社会に対する違和感。
牛が人工的肥料ではなく草を食べるのがまっとうなように、人間も、他の人間に対して愛を分かち合うことができるような、その愛の気持ちがわき起こるような話を語りたいという、作家の言葉。
フェミニズムといってもいろいろあるし、いろんなタイプの人がいて、それはそれでいい——けど、チェ・ウニョン作家が語る「フェミニズム」は、とりわけ私が共感できるものだったように思う。
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自己啓発本で軽くなり、小説で重くなる。忙しない日々。
でも多分、人生にはどっちも必要なんだろう。
過度なポジティブさも、過度なネガティブさも必要ない。真実は、そのどちらにもないのだから。
チェ・ウニョン作家の最新作のタイトルは、『明るい夜(밝은 밤)』。
その意味を問われて、真っ暗な空に光る月の光のようなほのかな明るさのことだと語っていた——蛍光灯のギラギラした光ではなく、ほのかで澄んだ月の光。
人生もきっと、そんなものなのだろう。
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